大判例

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東京高等裁判所 昭和36年(う)146号 判決

被告人 柴田重蔵 外一名

〔抄 録〕

又原判決は証人大石昌子こと飯塚昌子の供述を事実認定の証拠として挙示しているのであるが、記録に徴すれば右大石昌子は昭和三十四年九月三十日の原審第二回公判廷において証言し、その後同三十五年十一月十六日公判廷外である葛飾簡易裁判所で証言しているので原判決は右両証言を証拠としたとも解されるが前記公判廷における供述が原判決判示事実を認定するに欠くことのできない内容を有するに徴すれば、原判決は少くとも右証人の右公判廷の供述を証拠としたものと解せられる。ところが右公判廷における右証人の供述は、これを右公判期日の公判調書中の右証人大石昌子の尋問調書に徴すれば、同証人が検察官の問に対し、本件事件のあつた当時の状況については思い出せない旨答えるや、検察官は右大石昌子の司法警察員に対する供述調書中事件当時の模様について述べた部分を一段落づつ逐一読み聞けその都度警察官にはかように述べているが間違ないかと問い右証人において「間違ありません」と答えた供述で、殆んど司法警察員に対する同証人の供述を問の形で引き写した観を有するものであることが認められる。被告人以外の者の司法警察員に対する供述調書は、供述者が死亡、所在不明等特に限られた場合の外は証拠能力ないものとして証拠とすることが許されないものであるのに、前記の如き証人尋問の方法による証人の供述を証拠とすることは、本来許されない司法警察員に対する被告人以外の者の供述調書を証拠とするに等しいから、右の如き尋問方法による証人の供述も亦証拠とすることを許さない証拠能力のないものと云わなければならない。してみれば原審が前記公判廷における証人大石昌子の供述を採用して本件判示事実認定の証拠に供したのは採証の法則に違背した訴訟手続の法令違反ありというべく、右証人の証言が前記の如く原判決判示事実認定に関する最も重要な証拠と認められるものであることに鑑みれば、右違反は判決に影響を及ぼすことが明らかであつて、原判決は此の点において破棄を免れない。論旨は理由がある。

(岩田 渡辺辰 秋葉)

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